実は今、薬剤師の転職先として密かに人気となっているのが「漢方薬局」なのです。
最近では、病院での処方に漢方薬が使用される機会が多くなり、漢方薬の認知度は上がってきています。
それと同時に、漢方薬局の店舗数は着実に増加しています。
漢方薬による治療が推奨されている現在、漢方の知識を深めたい!と考えている薬剤師さんも多いでしょう。
ここで、漢方薬局で働く薬剤師とは一体どんなものなのか?何か資格は必要なのか?メリット、デメリットは?など、漢方薬局について詳しく説明していきたいと思います。
漢方薬局とは?
漢方薬局とは、漢方薬を専門に取り扱う薬局です。
医師の処方せんが必要のない一般用漢方のみを取り扱う漢方薬局がほとんどなので、医師ではなく、薬剤師が患者さんにカウンセリングを行います。
漢方薬局では、患者さんの体質や生活習慣、来局した背景などを細かく聞きとって把握し、患者さんに合った漢方を選びます。
漢方は種類がとても多い上に、体質に合っていないと副作用へと繋がってしまいます。
なので、しっかりと時間をかけてカウンセリングを行う必要があるのです。
一般用漢方とは?
処方せんが必要のない漢方薬のことです。
OTC薬と同じく医師の診察なく購入できる薬で、保険はききません。
一般用漢方の中にも第一類、第二類などの区分があり、第一類の漢方の販売には薬剤師資格が必要ですが、それ以外は登録販売者でも販売することが可能です。
医療用漢方とは?
医師の診察によって処方される漢方薬のことです。
医療用医薬品であるため、保険がききます。
つまり、病院や調剤薬局でもらえる薬であるため、薬剤師しか出すことは出来ません。
漢方薬剤師になるためには?
漢方薬局で働く漢方薬剤師になるために、なにか資格が必要なのか?と言いますと、そうではありません。
「漢方薬剤師」になるための決まった資格はないのです。
ただ「漢方薬剤師」として名乗るためには、専門的な漢方の知識を豊富に身につけ、マスターすることが必要です。
漢方薬剤師として、一人前の知識を身につけるための3つの方法をお教えしましょう。
①漢方薬・生薬認定薬剤師の資格を取る
漢方薬・生薬認定薬剤師とは、漢方薬・生薬に関してあるレベル以上の能力と適性を持っていることを証明された薬剤師を指します。
認定されることにより、自信を持って患者や処方医師に情報を提供することが出来ます。
・・・資格を取るためには?・・・
9回の講義研修と1回の薬用植物園実習により成り立つ「漢方薬・生薬研修会」を受講し、試験に合格する必要があります。
研修会は、座学研修・ビデオ集合研修・インターネット研修から選ぶことが出来ます。
もちろん認定申請は、日本国の薬剤師免許を持っている方に限ります。
認定後は3年毎に更新をすることになります。
更新のためには、その3年間に漢方薬・生薬に関する研修を行い、定められた単位を取得することが必要です。
研修会受講料:約5万~6万円
認定申請手数料:約2万円
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②漢方薬勉強会に参加する
漢方薬の勉強会はまだ多いとは言えませんが、探してみると意外と、自分の条件に合った場所・日時で開催されているものです。
漢方製薬メーカーである、「小太郎漢方製薬」「クラシエ薬品」「ツムラ」は勉強会を定期的に開催しています。これらのホームページに詳細が掲載されているので、アクセスしてみてくださいね。
また、近くの漢方薬局でも勉強会を開催していることがあるので、こまめにチェックしてみましょう。
日本漢方協会では、e-ラーニングで学べる講座が用意されているので、お手軽に知識を深めることが出来ます。
漢方薬は勉強会が少ない!と諦めず、検索ワードを絞って調べてみることがオススメです。
③漢方薬がメインの薬局で働く
一人前の知識を身につけるためには、漢方薬メインの薬局で働くことが一番確実であり、一番の近道でしょう。
漢方薬局では、普通の調剤薬局とは比べものにならないほどの種類の生薬がそろっています。
何百という種類の生薬が取り揃えられ、その組み合わせは何十万通りにもなります。
その中で薬剤師として働くことで、常に患者さんと隣り合わせで漢方に触れ、実践していくことで、漢方の専門知識を着実に身につけることができるでしょう。
漢方薬局で働くメリット
漢方の専門知識が身につく
漢方による治療を実地で学ぶことのできる環境であるため、漢方の専門知識は身についていく一方です。
一般的な調剤薬局では経験できない数の漢方に触れ、漢方薬の取り扱いスキルを向上させることができます。
やりがいを感じられる
漢方薬局の最大の特徴は、薬剤師が患者さんのカウンセリングを行い、処方することです。
患者さんの体質や症状を細かく聞き取り、薬剤師の判断で漢方を決定します。
自分が選んだ漢方薬で患者さんが元気になり、感謝されることに大きなやりがいを感じることができます。
また漢方薬は体質改善を目的としているため、長期的に来局する患者さんがほとんどです。
なので患者さんとの仲も深まる上に、徐々に体調が良くなる患者さんを見守ることができるのも、漢方薬局ならではです。
近頃では病院でも漢方を処方されるケースが多いため、将来的に自分の薬局を開業したい人にとっても、漢方に詳しいことは強みになることでしょう。
漢方薬局で働くデメリット
給料が低い
薬剤師の平均年収は500万円以上ですが、漢方薬局では年収400万円前後のところが多いです。
漢方薬局ではほとんどが保険のきかない一般用漢方であるため、仕方のないことかもしれません。
漢方薬局への転職で年収アップを望むことは、店長などの役職がある立場でない限り難しいでしょう。
求人が少ない
漢方薬局の数は増えつつはあるものの、採用枠・求人数がまだまだ少ないのが現状です。
ここで、漢方薬局で働くためのオススメの方法は、繋がりを作ることです。
漢方薬の学会や勉強会に参加し、漢方薬局に関わる人と交流を深め、顔を知ってもらいましょう。
漢方薬局は個人経営がほとんどのため、独自に薬剤師を採用するパターンがよくあるのです。
積極的な行動がとても大切になるでしょう。
薬剤知識が薄れる
漢方薬局で勤めはじめると、通常の調剤を行うことがなくなってしまいます。
そのため、薬剤に関する知識が薄れてしまうことが考えられます。
一生漢方に関わって働きたい!というのならば関係ありませんが、もしもの転職の際には不利になってしまうでしょう。
「漢方薬局で働く薬剤師」をイメージすることはできたでしょうか?
これから先、漢方薬の需要は高まっていくと考えられています。
漢方薬局での“やりがい”は、他のどの薬剤師職でも経験できない新たな“やりがい”であることでしょう。
漢方薬に興味のある薬剤師さんはぜひ、挑戦してみてくださいね!